今回のテーマは、「民法:請負契約」である。
令和7年度 マンション管理士試験 問16
〔問 16〕 甲マンション 202 号室を所有するAが、Bとの間で、報酬を支払って同室
をリフォームしてもらう旨の請負契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aの責めに帰することができない事由によってBが仕事を完成することができなくなった場合において、Bが既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によってAが利益を受けるときは、Bは、Aに対し、Aが受ける利益の割合に応じて報酬の支払を請求することができる。
2 Aが死亡した時は、AB間の請負契約は直ちに終了する。
3 Bの仕事が完成するまでの間であれば、Aはいつでも請負契約を解除することができるが、やむを得ない事由があるか否かにかかわらず、Bの損害を賠償しなければならない。
4 Aが破産手続開始の決定を受けたときは、Bは、仕事が完成するまでの間であれば請負契約を解除することができる。
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正解は 2 です。
【前提知識】
民法(請負契約)
それでは、各肢を検討していこう。
1 正しい。
請負の中途終了による報酬請求権
- 義務の消滅(不可抗力など)
注文者(A)と請負人(B)のどちらの責任でもない事由で完成が不能になった場合(地震での倒壊など)、Bの「完成させる義務」はなくなるが、同時にAの「報酬全額を払う義務」もなくなる。 - 報酬請求ができる要件
ただし、以下の2点を満たす場合、一部の報酬を請求できる。- 仕事の結果が可分(分けられる)であること。
- その部分によって注文者が利益を受けること。
- 請求できる額
報酬全額ではなく、「注文者が受ける利益の割合」に応じて計算される。
民法(e-Gov法令検索)
(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第634条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
2 誤り。
「注文者の死亡」によって請負契約が当然に終了するという規定はない。
この点は、試験でよく狙われる「委任契約」との違いを整理しておくのがポイントとなる。
請負と委任の比較(死亡の影響)
| 契約の種類 | 注文者・委任者の死亡 | 請負人・受任者の死亡 |
| 請負 (632条〜) | 終了しない(原則、相続人が地位を承継) | 終了しない(原則、相続人が承継) |
| 委任 (643条〜) | 終了する (653条1号) | 終了する (653条1号) |
3 正しい。
注文者による契約の解除
- 「いつでも」解除可能
仕事が完成するまで(=建物であれば引き渡し前など)であれば、注文者(A)は理由を問わず、一方的に契約を終わらせることができる。 - 「やむを得ない事由」は不要
「気が変わった」「他社の方が安かった」といった個人的な理由でも解除は有効である。 - 損害賠償は必須
理由を問わず解除できる反面、請負人(B)が被る不利益を補償する必要がある。そのため、Bがそれまでに費やした材料費や工数、得られたはずの利益(逸失利益)などは、すべて賠償しなければならない。
「委任」との比較
ここでも、委任契約とのルールの違いがよく試験で問われる。
| 項目 | 請負 (641条) | 委任 (651条) |
| 誰が解除できるか | 注文者のみ (※例外あり:642条) | 各当事者(委任者・受任者ともに) |
| いつ解除できるか | 仕事の完成まで | いつでも |
| 損害賠償の要否 | 必要(理由を問わず) | 原則必要(不利な時期等の場合)※やむを得ない事由による免責あり |
民法(e-Gov法令検索)
(注文者による契約の解除)
第641条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
4 正しい。
本来、請負人(B)からの自由解除は認められていないが、お金を払う側である注文者(A)が破産したとなると、Bは「せっかく作っても報酬を払ってもらえない」というリスクを負うことになる。そのため、民法では、この場合は解除権を認めている。
民法(e-Gov法令検索)
(注文者についての破産手続の開始による解除)
第642条 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。
(解法のポイント)
請負では、
「いつでも・理由なく」解除できるのは、注文者だけ。
「注文者が破産した」という特別な事情があれば、請負人からも解除できる。


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