今回のテーマは、「所有権の対抗要件」である。
それでは、「令和7年度 マンション管理士試験」の過去問にチャレンジしてみよう。
令和7年度 マンション管理士試験 問12
〔問 12〕 Aは、甲マンションの 302 号室を所有している。この場合に関する次の記
述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが、Bとの間で 302 号室の売買契約を締結し、Bにその所有権の移転登記がされない間に、さらにCとの間で同室の売買契約を締結し、Cにその所有権の移転登記がされた場合には、Bは、Cに対し、同室の所有権を対抗することができない。
2 Aが、Bとの間で 302 号室の売買契約を締結し、Bにその所有権の移転登記がされ、さらにBがCとの間で同室の売買契約を締結してCにその所有権の移転登記がされた場合において、その後、AがBの強迫を理由としてAB間の売買契約を取り消したときは、Aは、同室の所有権をCに対抗することができない。
3 Aが、Bとの間で 302 号室の売買契約を締結し、Bにその所有権の移転登記がされたが、AがBの代金不払いを理由にAB間の売買契約を解除した場合において、その後、BがCとの間で同室の売買契約を締結し、Cにその所有権の移転登記がされたときは、Aは、同室の所有権をCに対抗することができない。
4 Aが遺言をせずに死亡し、子Bと子CがAを共同で相続して 302 号室の所有権を共有している場合において、Cが、Bに無断でC単独の名義で同室の所有権の移転登記をし、さらにDとの間で同室の売買契約を締結してDにその所有権の移転登記がされたとしても、Bは、自らの持分について、Dに対抗することができる。
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正解は 2 です。
【前提知識】民法
それでは、各肢を検討していこう。
1 正しい。
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(民法)
なお、第三者とは、「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」である。
2 誤り。
強迫を理由としての取り消しは、善意無過失の第三者に対しても対抗できる。
(民法96条3項の反対解釈)
3項の文言を見ると、対象を「詐欺による意思表示の取消し」に限定している。ここから「反対解釈(規定されていないものは、逆の結論になるという解釈)」を用いると、以下のようになる。
反対解釈: 3項に「強迫」が含まれていない以上、強迫による取消しについては、第三者が善意無過失であっても対抗することができる。
(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
3 正しい。
本肢では、Aが契約を解除したことで、所有権は「BからA」に戻る。しかし、Bがそれを無視して「BからC」へ売却してしまったため、「Bを起点とした二重譲渡」と同じような状態になる。
- A: 解除によって所有権を取り戻した人
- C: 解除後にBから買い受けた人
このAとCの関係は、先に登記を備えた方が勝つという「対抗問題(民法177条)」として処理される。
結論: Cが先に登記を備えているため、AはCに対して所有権を対抗することができない。
4 正しい。
- 法定相続分の絶対性: 相続人Bが法律によって当然に受け継いだ持分(今回の場合は$1/2$など)は、Bの意思に関係なく発生した権利。
- 無権利者からの譲受: Cが勝手に単独名義にしたとしても、Bの持分についてはCは「無権利者」である。無権利者から買い受けたDは、たとえ善意無過失であっても、Bの持分を取得することはできない。
結論: Bは「自分の持分」については、登記を備えていなくても、勝手に登記・売却したCや、それを買ったDに対して「それは私の分だ」と対抗できる。
(参考)
第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
(略)
(民法)
相続については、法定相続分までは登記がなくても第三者に対抗できるが、それを超える部分は登記が必要である。
(解法のポイント)
本問は、比較的容易に正解できたのではないだろうか。
肢2は頻出論点である。余裕があれば、肢4についても知識の整理しておこう。


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