マンション管理士の過去問を解こう(令和5年度)「滞納対策」

競売 マンション管理士

本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。

今回のテーマは、「滞納対策」である。

それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 マンション管理士試験 〔問18〕

〔問 18〕 滞納となっている管理費の回収のため、管理者が、区分所有法第7条の先取特権(この問いにおいて「先取特権」という。)に基づき滞納者が所有する敷地権付き区分建物を目的とする担保不動産競売の申立てをする場合に関する次の記述のうち、区分所有法、民法、民事執行法(昭和54 年法律第4号)及び不動産登記法(平成16 年法律第123 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 敷地権付き区分建物の登記記録の乙区に第一順位の抵当権が登記されている場合、先取特権は優先順位において抵当権に劣後する。
2 敷地権付き区分建物の当該建物のみを目的とする先取特権の登記を申請することができる。
3 敷地権付き区分建物の登記記録の乙区にあらかじめ先取特権の登記がなされていなくても、担保不動産競売の申立てをすることができる。
4 滞納者が死亡し、敷地権付き区分建物につき相続を原因とする所有権移転登記がなされていない場合、管理者が相続人に代位して当該登記を申請することができる。

令和5年度 マンション管理士試験

正解:2

それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、(2023年)令和5年4月1日現在施行している法令等に基づいて出願されているが、本稿は、執筆時点で施行している法令等に基づいて、正解、解説を執筆する。

1 正しい。

区分所有法第7条の先取特権は、共益費用の先取特権とみなされる。(区分所有法7条)
そして、共益費用の先取特権は一般の先取特権である。
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、対抗することができない。(民法336条)

したがって、先取特権は優先順位において抵当権に劣後する。

2 誤り。

敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。(不動産登記法73条3項本文)

3 正しい。

敷地権付き区分建物の登記記録の乙区にあらかじめ先取特権の登記がなされていなくても、担保不動産競売の申立てをすることができる。(民事執行法181条1項4号)

(不動産担保権の実行の開始)
第181条 不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。
 担保権の存在を証する確定判決若しくは家事事件手続法第七十五条の審判又はこれらと同一の効力を有するものの謄本
 担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
 担保権の登記(仮登記を除く。)に関する登記事項証明書
 一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書
民事執行法・e-Gov法令検索

4 正しい。

滞納者が死亡し、敷地権付き区分建物につき相続を原因とする所有権移転登記がなされていない場合、管理者が相続人に代位して当該登記を申請することができる。

(債権者代位権の要件)
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(被代位権利)を行使することができる。(民法423条1項本文)

債権者代位権の目的は本来、債務者の責任財産を保全する点にあり、被保全債権は金銭債権が原則であるが、金銭債権でなく、ある特定の債権の保全のために債権者代位権が用いられる場面があり、これを「債権者代位権の転用」という。この場合は、債務者の無資力要件は不要とされる。

不動産登記簿に表示された所有者が死亡したが,その所有権(持分)に関して,相続を原因とする所有権(持分)移転登記がなされていない不動産に対し,競売(強制競売)を申し立てるためには,債権者代位権(民法423条)に基づき,相続を原因とする所有権(持分)移転登記の代位登記をする必要がある。(参考)裁判所のWebサイト「競売申立時の代位登記について」

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