マンション管理士の過去問を解こう(令和6年度)「管理費の滞納」

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今回のテーマは、「管理費の滞納」である。

なお、本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。

それでは、「令和6年度 マンション管理士試験」の過去問にチャレンジしてみよう。

〔問 8〕 甲マンションの区分所有者Aは、長期間にわたって管理費等を滞納し、管 理組合の運営に重大な支障が生じている。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはいくつあるか。

 ア Aが区分所有権をBに譲渡した場合、甲マンションの管理組合は、Aに対してのみならずBに対しても滞納金の支払を請求することができる。 

イ 他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、Aの区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができるが、当該決議をするには、あらかじめ、Aに対し、弁明する機会を与えなければなら ない。 

ウ 滞納金に係る債権を担保するためにAが建物に備え付けた動産の上に先取特権が発生し、この先取特権は動産保存の先取特権と同等の優先順位を有する。 

エ 区分所有法第7条に基づく先取特権の実行によってその債権の満足を得るこ とができるとしても、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有法第 59 条に基づく競売請求をすることができる。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。

ア 正しい。

譲受人(B)も特定承継人として、滞納金の支払を請求することができる。(区分所有法第8条)

イ 正しい。

区分所有法第59条に基づく競売請求には、集会の決議に加えて、対象となる区分所有者に対して弁明の機会を与えることが必要である。(区分所有法59条2項)
これは、所有権という重大な権利を制限する手続きであるため、適正手続の保障として当然の要件であろう。

ウ 誤り。

区分所有法第7条の先取特権は、「共益費用の先取特権」とみなされる一般の先取特権である。
民法上、一般の先取特権は特別の先取特権(例:動産保存の先取特権)に劣後する。
したがって、「同等の優先順位を有する」という記述は誤りとなる。

エ 誤り。

区分所有法第59条による競売請求は、管理費等の滞納が「管理に著しい支障を及ぼす場合」に限られる。一方、先取特権の実行により債権が回収できる場合には、競売請求の必要性がなくなるため、裁判所が請求を認めない可能性がある。
したがって、「満足が得られても競売請求できる」と断定するのは誤りとなる。

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