本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。
今回のテーマは、「敷地利用権等」である。
それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和3年度 マンション管理士試験 〔問1〕
〔問 1〕 Aは、甲地、乙地及び丙地の3筆の土地にまたがり、それぞれの上に、構造上、利用上も区分され、独立して住居の用途に供することができる建物の部分を有する1棟の建物(いわゆるタウンハウス)を建築し、甲地上の建物の部分(①)をA自身の居住用として使用し、乙地上の建物の部分(②)をBに、丙地上の建物の部分(③)をCにそれぞれ分譲した。ただし、Aは、乙地をBに、丙地をCにそれぞれ賃貸しているものとする。
この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法(明治29 年法律第89号)の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ア この1棟の建物について、A、B、Cの全員によって区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体が組織される。
イ 敷地利用権について、BとCは、乙地及び丙地の賃借権の準共有者となる。
ウ Bは、建物の部分を第三者に譲渡する場合、その敷地利用権の譲渡について、Aの承諾が必要である。
エ Cは、建物の部分の敷地利用権に、Aの承諾を得て抵当権を設定することができる。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
令和3年度 マンション管理士試験
正解:2
それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、2021年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づくものとする。
ア 正しい。
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
(区分所有法3条前段)
本肢の建物は、構造上、利用上も区分され、独立して住居の用途に供することができる建物の部分を有する1棟の建物(区分所有建物)であり、A、B、Cの全員は、区分所有者である。
イ 誤り。
乙地及び丙地は、それぞれ一筆の土地であり、Aは、乙地をBに、丙地をCにそれぞれ賃貸している。
したがって、Bは乙地の賃借権を、Cが丙地の賃借権をそれぞれ独立して有する。
したがって、BとCは、乙地及び丙地の賃借権の準共有者となるのではない。(民法264条参照)
ウ 正しい。
Bは、建物の部分を第三者に譲渡する場合、その敷地利用権の譲渡について、Aの承諾が必要である。
(民法612条1項)
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
(略)
(民法・e-Gov法令検索)
エ 誤り。
(抵当権の内容)
第369条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
(民法・e-Gov法令検索)
したがって、Cが有する敷地利用権は賃借権なので、その敷地利用権に抵当権は設定できない。
コメント