今回のテーマは、「建替え決議」である。
それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和5年度 マンション管理士試験 〔問9〕
〔問 9〕 甲マンションの集会においてマンションの建替え決議が成立した。Eは建替え決議に賛成した区分所有者であり、A、B、C及びDはいずれも建替え決議に賛成しなかった区分所有者である。決議後、集会招集者が建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対して建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告した場合の取扱いに関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 Aが催告を受けた日から2月以内に回答しなかった場合には、Aは、建替えに参加する旨を回答したものとみなされる。
2 Bが催告を受けた日から2月以内に建替えに参加する旨を回答した場合であっても、EはBに対して、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
3 Cが建替えに参加しない旨を回答し、EがCに区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求した場合において、EはCに対して建物の移転登記手続の履行を求めるためには、売買代金を提供しなければならない。
4 Dが建替えに参加しない旨を回答し、EがDに区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求した場合において、Dが建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、代金の支払又は提供の日から1年を超えない範囲内において、Eに対する移転登記手続をする義務について相当の期限を許与することができる。
令和5年度 マンション管理士試験
正解:3
それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づいて執筆する。
また、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。
1 誤り。
建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。(区分所有法63条1項)
そして、催告を受けた区分所有者は、催告を受けた日から2か月以内に回答しなければならない。(同3項)
この期間内に回答しなかつた催告を受けた区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。(同4項)
2 誤り。
催告の回答期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(買受指定者)は、期間の満了の日から2カ月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。(区分所有法63条5項)
したがって、Bは催告を受けた日から2月以内に建替えに参加する旨を回答しているので、Bに対して区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することはできない。
3 正しい。
Cが建替えに参加しない旨を回答し、EがCに区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求すると、直ちに売買契約が成立する。(区分所有法63条5項、民法555条)
すると、Cの専有部分の引渡し義務及びその登記を移転する義務を負い、Eは、時価による売買代金の支払い義務を負う。この両者の義務は、同時履行の関係となる(民法533条)
したがって、EはCに対して建物の移転登記手続の履行を求めるためには、売買代金を提供しなければならない。
4 誤り。
建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求があった場合、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から1年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。(区分所有法63条6項)
したがって、移転登記手続をする義務について相当の期限を許与するのではない。
(解法のポイント)売渡請求権について、本問でしっかりと復習しておこう。
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