今回のテーマは、「賃貸借契約」である。
それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和3年度 マンション管理士試験 〔問17〕
〔問 17〕 Aは、甲マンション404 号室をBから賃借して居住していたが、存続期間
の満了によってAB間の賃貸借契約は終了した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aの居住中に404 号室に損傷が生じた場合であっても、その損傷が通常の使用収益によって生じた損耗に当たるときは、Bは、Aに対し、その損傷を原状に復するよう請求することができない。
2 Aの居住中に404 号室に損傷が生じた場合であっても、その損傷がAの責めに帰することができない事由によるものであるときは、Bは、Aに対し、その損傷を原状に復するよう請求することができない。
3 Aが、賃貸借契約終了の2ヵ月前に、404 号室に物を附属させていた場合であっても、その物を同室から分離することができないとき又は分離するのに過分の費用を要するときは、Aは、Bに対し、その物を収去する義務を負わない。
4 Aが、賃貸借契約終了の2ヵ月前に、404 号室についてBの負担に属する必要費を支出した場合であっても、その必要費の償還を請求しないまま賃貸借契約が終了し、同室をBに返還したときは、その後は、Aは、Bに対し、その必要費の償還を請求することができない。
令和3年度 マンション管理士試験
正解:4
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2021年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づくものとする。
1 正しい。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。(民法621条本文)
したがって、Bは、Aに対し、その損傷を原状に復するよう請求することができない。
2 正しい。
その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、現状に復する義務を負わない。(民法621条ただし書)
したがって、Bは、Aに対し、その損傷を原状に復するよう請求することができない。
3 正しい。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、賃貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、その義務を負わない。(民法622条、599条1項)
したがって、Aは、Bに対し、その物を収去する義務を負わない。
4誤り。
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法608条1項)
この請求権は、請求しないまま賃貸借契約が終了し、賃貸人に賃借物を返還しても失われることはない。
したがって、Aは、Bに対し、その必要費の償還を請求することができる。
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