マンション管理士の過去問を解こう(令和5年度)「消滅時効」

時効 マンション管理士

今回のテーマは、「民法」から「消滅時効」である。

それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 マンション管理士試験 〔問17〕

〔問 17〕 甲マンションの501 号室に居住するAは、令和2年5月1日午後1時、同室のベランダに干していた布団を誤って屋外に落としてしまい、Bが所有し運転していた自転車に落下した布団が当たり、同自転車が転倒し破損するとともに、転倒したBが負傷した。
その後、Bには後遺症が残ったものの、Bの治療が令和2年7月31 日に終了し、同日に症状固定の診断を受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、BはAが布団を誤って屋外に落としたことを事故当日に知っており、時効の更新事由あるいは完成猶予事由はないものとする。

1 BのAに対する人身傷害に係る損害賠償請求権は、令和7年7月31 日の経過時に時効により消滅する。
2 BのAに対する自転車損傷に係る損害賠償請求権は、令和7年5月1日の経過時に時効により消滅する。
3 BのAに対する人身傷害に係る損害賠償請求権は、令和7年5月1日の経過時に時効により消滅する。
4 BのAに対する自転車損傷に係る損害賠償請求権は、令和5年7月31 日の経過時に時効により消滅する。

令和5年度 マンション管理士試験

正解:1

それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、(2023年)令和5年4月1日現在施行している法令等に基づいて出願されているが、本稿は、執筆時点で施行している法令等に基づいて、正解、解説を執筆する。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての一般原則は、次の通りである。(民法724条)

  1. 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
  2. 不法行為の時から20年間行使しないとき。

そして、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から」の規定が、「5年間行使しないとき」となる。(724条の2)

問題文を検討すると、BはAが布団を誤って屋外に落としたことを事故当日(令和7年5月1日)に知っており、自転車損傷に係る損害賠償請求権は民法の原則通り、令和2年5月1日から3年間で時効消滅する。

また、Bには後遺症が残ったものの、Bの治療が令和2年7月31 日に終了し、同日に症状固定の診断を受けているので、同日に「損害を知った」ことになる。この場合は、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求となり、令和2年7月31 日から5年間で時効消滅する。

以上をふまえて各肢をみていこう。

1 正しい。

人身傷害に係る損害賠償請求権は、5年間で時効消滅する。したがって、令和7年7月31 日の経過時に時効により消滅する。

2 誤り。

自転車損傷に係る損害賠償請求権は原則通り、3年間で時効消滅する。したがって、令和5年5月1日の経過時に時効により消滅する。

3 誤り。

人身傷害に係る損害賠償請求権は、5年間で時効消滅する。したがって、令和7年7月31 日の経過時に時効により消滅する。

4 誤り。

自転車損傷に係る損害賠償請求権は原則通り、3年間で時効消滅する。したがって、令和5年5月1日の経過時に時効により消滅する。

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