マンション管理士の過去問を解こう(令和5年度)「義務違反者」

迷惑行為 マンション管理士

今回のテーマは、「義務違反者」である。

それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 マンション管理士試験 〔問8〕

〔問 8〕 甲マンション101 号室はAが所有し、同室に隣接する102 号室はBが所有して居住しているところ、101 号室の室内には段ボール、空ペットボトル、ビニール袋に詰めたゴミなどがため込まれてこれらが積み上がった状況となり、悪臭などによってBを含むマンションの居住者に著しい迷惑が及んでいる。この状況のもとで、甲マンションの管理者又はBが講ずることができる措置に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 甲マンションの管理者は、管理規約に訴訟の提起についての定めがあったとしても、集会の決議がなければ、Aに対して、101 号室の室内のゴミなどの除去を求める訴えを提起することはできない。
2 甲マンションの管理者は、Aの所在を知ることができない場合には、裁判所に対して、101 号室の専有部分と共用部分の共有持分を対象として、所有者不明建物管理人による管理を命ずる処分を求めることができる。
3 Bは、Aによる101 号室の管理が不適当であることによって自らの健康を害して通院、治療が必要となった場合には、Aに対して損害賠償を請求することができる。
4 Bは、Aによる101 号室の管理が不適当であることによって自らの権利が害されている場合であっても、裁判所に対して、101 号室の専有部分と共用部分の共有持分を対象として、管理不全建物管理人による管理を命ずる処分を求めることはできない。

令和5年度 マンション管理士試験

正解:2

それでは、問題を検討していこう。

なお、問題は、2023年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づいて執筆する。

また、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。

1 正しい。

区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。(区分所有法6条1項)

Aの行為は、区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するが、この行為の結果を除去するために訴訟を提起するには、集会の決議が必要となる。(57条1項・2項)

2 誤り。

裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人による管理を命ずる処分をすることができる。(民法264条の8第1項)

ただし、民法のこの規定は、専有部分及び共用部分(区分所有建物)には適用しない。(区分所有法6条4項)

したがって、甲マンションの管理者は、裁判所に対して、101 号室の専有部分と共用部分の共有持分を対象として、所有者不明建物管理人による管理を命ずる処分を求めることはできない

3 正しい。

Aの行為により、AはBに対して不法行為責任を負う。(民法709条)

したがって、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができる。

4 正しい。

裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人による管理を命ずる処分をすることができる。(民法264条の14第1項)

ただし、民法のこの規定は、専有部分及び共用部分(区分所有建物)には適用しない。(区分所有法6条4項)

したがって、Bは、裁判所に対して、101 号室の専有部分と共用部分の共有持分を対象として、管理不全建物管理人による管理を命ずる処分を求めることはできない

解法のポイント所有者不明建物管理制度は、区分所有建物には適用されない

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