今回のテーマは、「物権変動の対抗要件」である。
それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和3年度 マンション管理士試験 〔問14〕
〔問 14〕 甲マンション102 号室を所有するAは、Bとの間で、同室を代金1,000 万円でBに売却する旨の契約を結んだ。その後、Aは、Cとの間で、同室を代金1,200 万円でCに売却する旨の契約を結んだ。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 CがBよりも先に代金1,200 万円をAに支払った場合であっても、BがCよりも先にAから102 号室の引渡しを受けたときは、Bは同室の所有権の移転登記を備えなくても、Cに対し、同室の所有権を取得したことを対抗することができる。
2 BがCよりも先に代金1,000 万円をAに支払い、CがBよりも先に102 号室の引渡しを受けたが、両者とも同室の所有権の移転登記を備えていないとき、BもCも互いに、同室の所有権を取得したことを対抗することができない。
3 CがAとの売買契約を結んだ当時、Bが既に102 号室をAから買い受けたことを知っており、かつ、CがBの登記の不存在を主張することが信義に反すると認められる事情がある場合には、Bは同室の所有権の移転登記を備えなくても、Cに対し、同室の所有権を取得したことを対抗することができる。
4 CがBよりも先にAから102 号室の引渡しを受けた場合であっても、Bが同室の所有権の移転登記を備えたときは、Bは、Cに対し、同室の所有権を取得したことを対抗することができる。
令和3年度 マンション管理士試験
正解:1
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2021年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づくものとする。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(民法・e-Gov法令検索)
1 誤り。
不動産が二重に売買された場合、第一の買主は、その登記をしなければ、所有権を取得したことを第二の買主に対抗できない。(民法177条)
したがって、Bは同室の所有権の移転登記を備えていなければ、Cに対し、同室の所有権を取得したことを対抗することができない。
2 正しい。
BもCも同室の所有権の移転登記を備えていないとき、BもCも互いに、同室の所有権を取得したことを対抗することができない。(民法177条)
3 正しい。
Cが背信的悪意者であるときは、Bは同室の所有権の移転登記を備えなくても、Cに対し、同室の所有権を取得したことを対抗することができる。(判例)
4 正しい。
CがBよりも先にAから102 号室の引渡しを受けた場合であっても、Bが同室の所有権の移転登記を備えたときは、Bは、Cに対し、同室の所有権を取得したことを対抗することができる。(民法177条)
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