管理業務主任者の過去問を解こう(令和5年度)「抵当権」

管理業務主任者

今回のテーマは、「抵当権」である。

それでは、「令和5年度 管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 管理業務主任者試験問題 【問 30】

【問 30】 甲マンションの住戸301号室を所有するAが、債権者Bのために301号室の区分所有権にBの抵当権を設定及び登記した場合に関する次の記述のうち、民法、区分所有法、民事執行法及び判例によれば、最も適切なものはどれか。なお、301号室の区分所有権には、Bの抵当権以外に担保権は設定されていないものとする。

1  管理組合が、Aの滞納管理費について、Aの301号室の区分所有権に対し先取特権を行使するためには、先取特権の登記が必要である。
2  Bの抵当権の効力は、301号室の専有部分と共に、当該マンションの共用部分等のAの共有持分にも及ぶが、抵当権設定契約で別段の設定をした場合には、その効力は及ばない。
3  Aが、301号室をCに賃貸している場合に、Aが、管理組合及びBに対する債務について不履行を生じさせたときは、管理組合が先取特権に基づきAのCに対する賃料債権を差し押さえたとしても、Bが物上代位に基づき当該賃料債権を差し押さえた場合には、管理組合は、Bに優先することはできない。
4  Bの抵当権の効力は、管理組合が滞納管理費の回収のために先取特権を行使する場合と同様に、Aによって301号室に備え付けられた動産に及ぶが、AB間に別段の合意がない限り、抵当権設定時に存在した動産に限られる。

令和5年度 管理業務主任者試験問題

正解:3

それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づいて執筆する。

「建物の区分所有等に関する法律」を、「区分所有法」という。

1 誤り。

区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。(区分所有法7条1項)

この先取特権は一般債権の先取特権である。そして、一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。(民法336条本文)

したがって、管理組合は、Aの滞納管理費について先取特権を有し、この先取特権を行使するためには、登記は必要ない

2 誤り。

共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。(区分所有法15条1項)

したがって、抵当権設定契約で別段の設定をしても、その設定契約は無効になる。

3 正しい。

管理組合が有する先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。(区分所有法7条2項)

そして、一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。(民法336条)

Bの抵当権は登記されているので、Bが物上代位に基づき当該賃料債権を差し押さえた場合には、管理組合は、Bに優先することはできない。(民事執行法87条)

4 誤り。

抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。(民法370条)

不動産に従として符合した動産である付合物(民法242条)は、独立性を失い、不動産の構成部分となってその不動産の所有権に吸収されるので、付合の時期を問わず不可一体物に含まれる。

したがって、抵当権設定後に301号室に備え付けられた動産にも抵当権の効力が及ぶ。

解法のポイント)抵当権に関する問題で難易度は高めだが、本問でしっかりと復習しておこう。

コメント

  1. himecom より:

    こちらの肢4の解説について
    LECの過去問題集の解説は下記のようになっています。
    従物は主物の処分に従う(民法87条2項)。本肢の301号室に備え付けられた動産が301号室の従物にあたらない場合、当該動産が301号室の抵当権設定に従うことはなく、Bの抵当権の効力は当該動産には及ばない。

    本肢の内容がよく理解できず、ネットで参考にできるものを探していたところ、そもそも解説の内容が違いましたので質問をさせていただきました。
    申し訳ないのですが教えていただけるようでしたら幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    • マンション管理人 より:

      ご質問ありがとうございます。
      以下の通り回答させていただきます。

      抵当権の効力は、「不動産に付加して一体となっている物」に及びます。(370条)
      なお、この「不可一体物の解釈」については、争いがあります。
      ・付合物(242条本文)
      不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得します。
      付合物は、独立性を失い、不動産の構成部分となってその不動産の所有権に吸収されるので、付合の時期を問わず不可一体物に含まれます。
      ・従物(87条1項)
      370条により抵当権の効力を認める説(多数説)
      370条の不可一体物には87条の従物を含まれるとします。
      抵当権設定後に設置された従物も「不可一体物」であるので、370条により抵当権の効力が及ぶとします。

      したがいまして、本肢の出題の趣旨は、従物か否かを問うものではなく、370条の「不可一体物」に付合物と従物が含まれ、抵当権設定時に存在しているかどうかで結果が異なることはないということだと思います。
      参考になれば幸いです。
      よろしくお願いいたします。

  2. himecom より:

    解説ありがとうございます!

    LECの解説はそもそも動産は従物にはあたらないということを前提としていますね。

    近年は動産も不可一帯物に含まれる従物とみなされるようになっている。
    そもそもこの問いは抵当権の効力が動産に及ぶということは前提でその効力が
    抵当権設定時に存在した動産にしか及ばないのかという効力の範囲を問うている
    ということで合ってますでしょうか。

    • マンション管理人 より:

      ご質問ありがとうございます。
      以下の通り回答させていただきます。

      「民法370条の不可一体物」は、87条1項の従物を含むのが通説となっています。
      ここを押さえておけばよろしいかと思います。
      そして、設問では、「301号室に備え付けられた動産」でありますので、これは付合物もしくは従物と解すのが自然です。
      ご指摘の通り、抵当権設定の前後を問わずに効力が及ぶということを理解しているのかを問うていると思われます。

      参考になれば幸いです。
      よろしくお願いいたします。

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