マンション管理士の過去問を解こう(令和5年度)「災害への備え(標準管理規約)」

防災 マンション管理士

今回のテーマは、「災害への備え(標準管理規約)」である。

それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 マンション管理士試験 〔問27〕

〔問 27〕 管理組合が実施する災害への備えのための活動に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切でないものはどれか。

1 管理組合は、近隣の自治会とも連携して地域住民と一体的に行われる防災訓練の費用について、マンション住民の避難訓練に相当する分を、管理費から拠出することができる。
2 管理組合は、組合員名簿とは別に、災害発生時に特別な支援を要する者に係る名簿を備えることとし、該当する組合員や居住者に当該名簿への記載の協力を求めることができる。
3 災害発生時に共用部分や他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるとして、理事長が緊急に専有部分や専用使用部分に立ち入るため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることもできる。
4 組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の多数による決議で管理規約を改正することにより、災害が発生して総会が開催できない場合には、全員の承諾を要せずに書面決議をすることができる。

令和5年度 マンション管理士試験

正解:4

それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づいて執筆する。

本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を区分所有法という。

1 正しい。

管理組合は、近隣の自治会とも連携して地域住民と一体的に行われる防災訓練の費用について、マンション住民の避難訓練に相当する分を、管理費から拠出することができる。
(標準管理規約27条11号、32条12号)

2 正しい。

管理組合は、組合員名簿とは別に、災害発生時に特別な支援を要する者に係る名簿を備えることとし、該当する組合員や居住者に当該名簿への記載の協力を求めることができる。(標準管理規約32条12号)

(業務)
第32条 管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
(略)
12 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
(略)
標準管理規約

3 正しい。

災害発生時に共用部分や他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるとして、理事長が緊急に専有部分や専用使用部分に立ち入るため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることもできる。

(必要箇所への立入り)
第23条 前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
3 前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
4 前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
(略)
標準管理規約

第23条関係
(第4項関係)
(略)
② 第4項の規定の実効性を高めるため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることも考えられるが、プライバシーの問題等があることから、各マンションの個別の事情を踏まえて検討する必要がある。
標準管理規約コメント

4 誤り。

区分所有法又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。(区分所有法45条1項)

なお、本規定には、「規約に別段の定めがある場合」等の記載はなく、本肢のような規約改正を行うことはできないと解される。(標準管理規約50条1項参照)

解法のポイント)肢4について
災害等の緊急時において、保存行為を超える応急的な修繕が必要であるにもかかわらず、総会の開催が困難である場合、理事会でその実施を決定できる。しかし、理事会の開催すらも開催が困難な場合は、保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施までも理事長が単独で判断し、実施することができる旨を規約に定めることができる。
このように緊急時の対応が問われることもあることに注意しておこう。

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