今回のテーマは、「民法:契約の締結」である。
令和7年度 マンション管理士試験 問15
〔問 15〕 Aが所有する甲マンションの 101 号室について契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法(平成3年法律第 90 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが 101 号室をBに贈与する契約をしたが、これを書面によってしなかったときは、履行が終了しない限りAは贈与契約を解除することができる。
2 AとCが 101 号室について定期建物賃貸借契約を締結する意図であったが、これを書面又はその内容を記録した電磁的記録によってしなかったときは、賃貸借契約は成立しない。
3 Aが 101 号室をDに賃貸し、EがAとの間でDの賃貸債務の保証をする契約をしたが、これを書面又はその内容を記録した電磁的記録によってしなかったときは、Eは保証債務を負担しない。
4 Aが管理組合とのトラブルの解決を弁護士Fに委任する契約をし、これを書面によってしたときであっても、AはいつでもFとの委任契約を解除できる。
答えを確認する
正解は 2 です。
【前提知識】
民法
借地借家法
それでは、各肢を検討していこう。
1 正しい。
民法では、あげる・もらうという「贈与」が軽率になされることを防ぐため、以下のルールを定めている。
- 「書面によらない」贈与の場合
書面を作っていない贈与は、原則として各当事者がいつでも解除(撤回)できる。口約束だけで「101号室をあげるよ」と言った段階では、まだ引き返せるということである。 - 「履行が終わった部分」は解除できない
ただし、たとえ書面がなくても、すでに履行が終了した部分については解除することができない。- 不動産の場合: 「引き渡し」が完了したか、あるいは「所有権移転登記」がなされた時点のいずれかで、履行が終わったとみなされる。
民法
(書面によらない贈与の解除)
第550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
2 誤り。
定期建物賃貸借の不成立と「普通借家契約」
定期建物賃貸借契約(更新がない契約)を締結しようとした際、書面(または電磁的記録)を作成しなかった場合の法的扱いは以下のようになる。
- 「定期」としては無効
借地借家法第38条第1項により、定期建物賃貸借契約を締結するには「書面」による契約が不可欠である。これを欠いた場合、「期間の定めがある更新がない契約(定期)」としての効力は認められない。 - 契約自体は「普通借家契約」として成立する
契約そのものが成立しない(無効になる)わけではなく、「更新がある通常の建物賃貸借(普通借家契約)」として成立したことになる。
ポイント: 法は「書面がないなら契約を白紙にする」のではなく、「書面がないなら、借り手を保護するために更新ができる普通の契約として扱う」というスタンスを取っている。
借地借家法
(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
3 正しい。
民法では、保証人の想定外の不利益を防ぐため、非常に厳格なルールを設けている。
- 書面または電磁的記録が必須
保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ、その効力を生じない。 - 「口約束」は無効
たとえAとEの間で「万が一のときは私が払います」という合意(口約束)があったとしても、書面がなければEは法的な保証債務を一切負担しない。
「書面がないと成立すらしない(=効力を生じない)」というルールは、保証契約において最も基本的ながら、試験でも非常に頻出のポイントである。
民法
(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
4 正しい。
弁護士への委任(訴訟やトラブル解決など)は、お互いの強い信頼関係の上に成り立つ契約である。そのため、どちらかが「もう任せられない」あるいは「もう受けられない」と思った場合、いつでも、理由を問わず解除できるのが大原則。
- 書面があっても解除可能
たとえ契約書を作成し、「期間を1年間とする」などの定めがあったとしても、この解除権を奪うことはできない。 - 相手方に対する損害賠償(第2項)
「いつでも解除できる」一方で、相手方に不利な時期に解除した場合や、相手方の利益を目的とする委任(報酬を得るための仕事など)を解除した場合には、相手方に生じた損害を賠償しなければならない場合があります。- 注意: 損害を賠償すれば解除自体は有効である。「損害賠償が必要=解除できない」という意味ではない。
民法
(委任の解除)
第651条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
(略)
(解法のポイント)
「定期借家」「保証」「委任」「贈与」は、書面の有無が結論を分ける頻出論点ばかりである。ここで、整理しておこう。


コメント